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ようやく長いトンネルを抜けた。勝利の笛が鳴ると、木村浩吉監督(47)は左手で小さくガッツポーズを作った。4月29日の千葉戦以来、リーグ戦で10試合も勝てず、6連敗も経験。いずれもクラブ史上ワーストの記録だった。桑原前監督も7月に更迭。どん底の状態で引き継ぎ、苦しみながらも勝利をつかんだ木村監督は「オレ、監督向いてないね」と苦笑した。

 今季は序盤戦で後手を踏むことが多かったが、この日は違った。「選手は言われたことはしっかりやる」という指揮官は時間帯による戦い方を指示。試合開始直後は前線からの守備やDFの背後を突くプレー、ミドルシュートなどを徹底するなど戦術を明確にした。これが功を奏し、前半31分にはFW大島が先制弾。後半も運動量を保ち、FW坂田が今季初ゴールで突き放した。大島は「試合の入り方などがはっきりした」と振り返る。

 結果が出なくても木村監督は信念を曲げなかった。就任当初から「コンディションのいい選手を使う」と宣言。主力でも練習で調子の良くない選手は先発から外した。この日はユース所属の高校3年生FW斎藤学もベンチ入り。初采配(さいはい)となった7月16日のアウェー神戸戦で三菱養和時代の恩師である塩谷英樹さんから掛けられた「信念を崩すな。思ったことを貫き通せ」という言葉は今でも頭に残っている。

 順位は変わらない。J2降格圏内の16位。反面、もがき苦しむ中でつかんだ勝利の重みは計り知れない。「今日の試合は3―1にしないといけなかった」と早くも反省の弁を残した木村監督。名門がこれから巻き返しを図る。
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