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「年に一度あるかないかのシュート」(DF中沢)が横浜Mは2発も決まった。何はともあれ、ホーム最終戦を笑顔で飾れたのはよかった。

 「状態がよくない清水に対し、押し込まれる時間が長かった」。中沢の感想に異議を唱える選手はいないだろう。

 そんな躍動感に乏しい試合後、嘉悦朗社長代行は「優勝争いから遠ざかって5シーズンになるが、今季は閉塞(へいそく)感を打開する一筋の光明が差した」とあいさつした。「栄光を知るベテランに加え、若手が台頭し、全体の融合も成された」と。

 その「光明」をもたらした木村監督は任期途中で更迭される。指揮官は”万年中位”の打破に必要なものを問われ、「やっぱり自信かな」と答えた。緩いプレスにも、ミスを連発する現状。だから試合にこそ強い「強者の精神」を、中長期的に醸成しようとしていた。確かに目の前の結果は不足したが、「自分の指導方針に間違いはなかった」との自負に無念が集約される。

 先制弾の小椋は「浩吉さん(木村監督)になってから使ってもらった」。ダメ押し点の栗原も、長く在籍する木村監督がさまざまな立場から見守ってきた生え抜きだ。「長い目」で育てられた2人が、この日の幸運な勝利を運んできた。

 これで10位が確定。劇的な補強がなければ、来季も中位を脱するのは厳しく映る。だからこそ、名門再建には一貫したビジョンが必要だと思われるのだが。


☆横浜マリノス木村監督、熱い惜別☆
◆選手ひと言
GK榎本 清水はサイド攻撃ばかりなので、そこを抑えればと思っていた。あのシュート2本は二度と出ないでしょう。

MF河合 監督の言葉からはマリノス愛が伝わってきた。やはり、このチームが弱くては駄目。もっと自覚を持ってやっていきたい。


◎木村監督、熱い惜別
 「わがマリノスは永遠に不滅です」-。選手から始まり、コーチなどを歴任し、前身の日産自動車を含めて横浜Mで25年間を過ごしてきた木村監督が、サポーターの前で熱い惜別の思いを語った。

 スタンドに深々と頭を下げた監督は、「この成績の責任はすべて自分にあります」と第一声。その上で「ずっとここでやってきて、最後に監督という業をなさないと意味がないと思っていた」と思いを吐露した。

 育成や指導のみならず、普及活動など多岐にわたって支え続けた功労者。「来年も8、9割の選手は残るでしょう。僕の大好きなマリノスで、ぜひ優勝を味わってほしい」と激励で締めた。


◎小椋、J1初ゴール
 MF小椋にDF栗原。2ゴールはともに、なかなかのワンダフルシュートだった。

 後半途中出場の小椋。同30分にペナルティーエリア後方から狙うと、「うまい具合に相手に当たりました」。絶妙なループシュートがGKの頭上を越え、自身のJ1初ゴールとなった。「浩吉さんには使ってもらい、本当に感謝している。サポーターにも最低限のお返しができた」と喜んだ。

 栗原は終了間際に足をつり、自ら「後ろにいると危険」と申し出て金根煥と入れ替わりでFWに上がり、44分に35メートル超の弾丸シュートを突き刺した。「自分でもまさかと思った」。長らく指導を受けた木村監督に対し、「辞任が決まったから頑張るのじゃなく、そうなる前にもっと頑張らないと駄目だった」と感謝と後悔の言葉を並べていた。
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