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「マツ(松田)の気持ちは皆に伝わったと思う。気合入りすぎていて、退場にだけはなるなよと試合前にも言ったんですけど、ちょっと危なかったかな(笑)」
 同い年にして、誕生日まで同じという、松田とは大いに気の合う吉田が笑った。開幕4ヶ月目にして初めてリーグ戦のピッチに立った『闘将』に後押しされるように、終始ガンバ大阪に勝る気迫と攻撃性を見せた横浜F・マリノス。昨年から続いていたG大阪の連続試合得点は「39」でストップした。
 
「やっぱり、マツさんはすごい」とは、守護神・榎本哲也。「いやいや、今日は皆が前から守備をやってくれたし、テツ(榎本)には助けられた。テツのおかげ」と松田が振り返るシーンは前半33分。「ボンバー(中澤)からオレのところに来ちゃって」という連係ミスから「バレーに当たって播戸に打たれたけど、よくテツが止めてくれた」。今日も、チームメート全員に感謝する松田であった。
 
 前節・清水戦で退場した栗原の出場停止に伴って、ついにこの男が帰ってきた。「マツ・マツ・マツ 松田直樹」。サポーターの横断幕もいつも以上に多い。詰め掛けた観客の熱気にも後押しされて、今シーズン一番の盛り上がりを見せた三ツ沢。0-0という結果以上に見ごたえのある好ゲームだった。
 
 前半、立ち上がりはG大阪ペース。ボランチからの押し上げ、バレーのポストプレーから、裏を狙う播戸の飛び出しが横浜FMのディフェンスラインを脅かす。4分には、飛び込んだ播戸とGK榎本が接触してヒヤリとしたが、事なきを得る。左サイドバック安田も好調。スピードに乗ったドリブルに対し、山瀬功らが懸命にタッチラインに追いやる。だが、最初のコーナーキックは横浜FM。9分、山瀬幸のCKから中澤が競って、こぼれ球を吉田がクロス。さらに跳ね返されるも、ここは中澤のシュートで終わる。
 
 G大阪は19分、右で受けた遠藤からオーバーラップした加地へ。加地の低いニアへのクロスに播戸が飛び込んだ。しかし、これは先にブロックした松田の気迫にクリアされた。横浜FMも24分、坂田が前から奪い左へ展開。小宮山からの折り返しに山瀬幸が切れ込んでセンタリング。吉田のシュートは跳ね返されるが、右につないで田中隼磨が抜け出したが、安田にファウルで止められた。
 
 吉田が「危なかった」と胸をなでおろしたシーンは27分。安田が切れ込んで松田をかわしてバイタルエリアにかかる瞬間、思わず右手が出てしまった。復帰戦で早くもイエローカードをもらってしまった松田。だが、ここからの集中には目を見張るものがあった。G大阪は再三得たフリーキックのチャンスも、遠藤が決めきれない。さらに、横浜FM榎本のスーパーセーブも連発、前半はG大阪の攻勢に横浜FMが耐え続けるという展開だった。
 
 後半、両チームは頭から『切り札』を投入して臨む。横浜FMは、山瀬幸に代えてハーフナーマイク。G大阪も播戸、安田を家長、マグノアウベスに代えてきた。天性の高さに加え強さを増したマイクのプレーが横浜FMのサイド攻撃に厚みを加える。6分、そのマイクが左から力強くシュート。GK藤ヶ谷が弾き返すが、そこへ坂田のジャンピングボレー。8分には、田中隼のクロスがマイクを越して左の吉田が折り返す。マイクへのマークでフリーになった坂田がまたもボレーシュートを見舞った。15分には、マイク自身が左からのクロスに、得意の左足で強烈ボレー。G大阪ゴールを脅かした。
 
 G大阪も奪ったあとのカウンターがスムーズにして必殺。17分、二川から受けたバレーがドリブル。しかし、ここは小宮山がうまく対応し、バレーのシュートは力が入らずサイドネット。横浜FMは相手のパスが乱れたところも、そつなく奪って攻撃につなげる。落ち着いてサイドを変える遅攻の展開からも、シュートで終わるシーンが多かった。
 
 だが、終了間際はG大阪の攻撃が凄みを見せる。37分には、シジクレイが待ちわびたように攻撃参加。ゆっくりドリブルで持ち上がり、二川とのワンツーで左からシュートを流し込んだが、これはポストをわずかにかすめるように流れてしまう。43分、二川から右のマグノアウベスに通るも、小宮山の落ち着いた対応にシュートはミートしなかった。さらに、ロスタイム。二川のシュートはクロスバーを叩いてしまった。
 
「今日、ガンバが得点すれば、40試合連続記録というのは知っていた。止められたのは良かったけど」再三のチャンスを決められなかった吉田は悔しさをにじませた。「ゼロに抑えたことはいいけど、勝ちたかった」と、松田も次なる戦いに闘志を見せる。
 一方、連続得点記録を止められたG大阪の山口も、「自分たちにチャンスはあったけど、相手にもチャンスをつくられたのは事実。やはり僕らはどういう試合でも、ゴールをこじ開けなければならない」と、気持ちを引き締めていた。
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