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MF中村俊輔(32)の復活劇で横浜が首位清水を撃破した。中村は、前半開始早々、MF兵藤慎剛(25)の先制ヘッド弾をアシストすると、同点で迎えた後半、今度は直接FKで決勝ゴールを挙げた。出場機会に恵まれず、辛酸をなめたW杯南アフリカ大会から約2カ月。日本代表からの引退も表明した悩める天才レフティーが、華麗なプレーで完全復調を印象づけた。

 同点で迎えた後半8分。MF中村は、自分のドリブル突破でFKを得た。清水陣ペナルティーエリア付近右サイド、ゴールまで約20メートル。左足から放たれたシュートは、立ちはだかった清水のカベ3人の横をすり抜け、右曲がりにカーブ。そのままゴール右隅に吸い込まれていった。

 チーム同僚が駆け寄ると、喜びをかみしめるようにしゃがみ込んだ。左足スパイクを手で何度も何度もたたき、美技を生んだ自慢の左足をアピールした。Jリーグでの直接FKゴールは、02年4月13日の広島戦以来8年ぶり。中村は清水を首位陥落させた会心の一撃を「ボールがうまく足に乗った。腰もうまく回ったね」と淡々と振り返った。

 W杯から帰国後、大会について、多くを語ろうとしない。日本代表の話題に触れることもない。それでも木村和司監督には「これからはクラブのために頑張りたい」と再び前に向かっていく決意を語った。周囲には「初心に帰って頑張る」と話している。W杯前から違和感を覚えていたコンディション不良も、体力測定などを受けて原因を究明。「長くサッカーを続けていきたいから」と、疲労回復力などをつける特別トレーニングに取り組んでいる。


課題を見つけて乗り越える自分らしさも取り戻してきた。清水戦前日には1時間半にわたるFKの居残り練習も行った。「最近、相手のカベの近さが気になっていた」。対応策として、練習ではカベ人形を規定の距離より数メートル近づけて置いてFKを蹴った。「向上のためだよ」。失意のW杯から2カ月。帰国直後は心が折れてしまったかのような表情を見せていたが、持ち前の探求心を失ってはいなかった。

 この日は前半2分にも絶妙のクロスで先制弾をアシスト。首位チームを相手にワンマンショーを演じた。木村監督も「久しぶりにすごいFKを蹴ってくれた」と不屈のエースの復調ぶりを喜んでいた。
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